鬼送りの章 *鬼隠しの子供達*  おろし!! #29 †馬凄蛾凄縛髪(バスガスバクハツ)2†

--------------------------

ガリガリ・・・
ガリガリ・・・

ガタン・・ガタン・・ガタン・・

 ガタつく車内。
車内は、まるで暗闇に食われたかのように・・・

ボッ・・・ヒュルルルル・・・ボッ・・

ひゅるひゅると青白い焔が酒野 肴の唇から出ている。
それを食い付くように見る高足 痢煙。
彼女の顔がその焔によって照らされている。

ちろちろ・・ちろ・・・

「ああ〜っ、肴ちゃん、それかっこいいね。」

「・・・」

肴は、答えず前を見ている。
彼女の眼はまるで鯖の眼のようだ。

「肴ちゃ〜ん、わたしもし〜たあい〜♪そおれ〜♪その、ほのお〜っ♪」

高足 痢煙は、両手で、肴の肩を持ち、
まるで、だだっ子の ように、言葉を吐き捨て、
彼女を、ゆっさ、ゆっさと揺らす。
そんな事しません(笑)
運転手の注意・・・ 

「走行中は席を立たないで下さい・・・」

など、決して痢煙の耳に入らない。

痢煙は、夢中だ。

ゆっさ・・ゆっさ・・ゆっさ・・・

 痢煙は、もう我武者らに肴の肩を揺らすので、
肴の首は激しく振り子運動 をしてしまう。

前・・後ろ・・前・・後ろ・・

そう、座席に頭がガンガン、それはもうガンガン叩き付けられるのだが、
それでも・・肴は、鯖の目をして いる・・・

ガンガン・・ぽっ・・ぽっ・・
ガンガン・・ぽっ・・ぽっ・・

肴の頭が座席に激突するたびに、肴の口から、焔がぽっと出るので、
痢煙は、それを見て、物凄くはしゃぎ、肴の首を必要以上に揺らし、
焔が出るとまた、はしゃいだ。

ぴき・・・き・・き・・・

やがて、肴の首ねっこに亀裂が走った。

「あら、ヒビが入っちゃったわ・・・肴ちゃん、ごめんね。・・ん?・・なんだ?」

なぜ酒野 肴がこんな酷い目に合わされているかと言うと
酒野 肴のモデルである花枝 坂奈が、
s嬢の事を「セクハラ」呼ばわりしたからなんですね。
お酒の席での話しで、何かの話しの時に、人に話題を振る言い方が
「セクハラおやじみたい」
と言って、その発言を撤回しないんですよ、坂奈ちゃん(笑)
撤回しないと「おろし」の中で酷い目にあわすよ〜って
s嬢は警告してたんですけど、それでも撤回しないんですよ(笑)
だから、その警告通り、どんどん酷い目に・・・

じい・・・・

痢煙は、肴の首筋に目を凝らす。
よくよく凝らす・・・

車内は恐ろしいほどに暗い。
首を刈られた乗客どもが、過ぎ行く街灯の光で、陰が際立っている。
そう、深夜のデパートのマネキン以上に恐怖な図である。

ゴゴゴゴゴゴ・・・・(車内の音・・・)

そのおぞましい車内で、まったく危機感を感じないでいる、
恐ろしい女 高足 痢煙の顔が意外にも何故か・・・ ひきつっている。

その、ひきつった顔で肴を見ている。肴の首筋を見ている・・・

ゴゴゴゴゴゴ・・・・(車内の音・・・)

何かが浮かび上がる・・何かが浮き出てきた・・・
肴の首筋に、ピタリピタリと血が充血して、浮きあがる2文字・・・

『生贄』

そして、『生』という文字がだんだん薄くなっていく。
まるで命が消えて行くように・・・
手に伝わる肴の体温までも消えて行く。

痢煙は、困惑する。

「なっ・・なんて読むの・・・」
読めるもん!!(爆笑)

そう、痢煙は、この漢字を読めないことに困惑している。
普通なら、このような文字が何故、肴の首筋に浮き出ているのかという事を、
一刻も早く考えなければならない、いや考えてしまう現状、現場にいるのに、
痢煙は、それを見事に裏切った・・・心情を持っている。おそろしい・・・

そして、今にも泣きそうな顔で、

「誰か〜この2文字読んで〜とても気になるの〜、ねえ〜気になるのお〜!!」

乗客どもは、誰もその問に答えようとしない。
いや、答えられないのだ。

「なんなの!無視ぶっこいて、ねえ、ちょっと読んでよ!これ!消えちゃうよ!」

ツカツカツカ・・・・

痢煙は、運転手の所まで移動する。
バスは、もちろん走行中である。

ツカツカツカ・・・・グイ・・・

痢煙は、いきなり運転手の襟を掴み、

「運転手さん、あんたなら首ついてるから読めるでしょう!こっち来て、 読んで!!」

ドカ・・・ガチャ

「うっ、うああああっ〜なっ、なに〜を〜」

運転手を強引に引きずる痢煙。
グイグイ引きずられる運転手。

今夜は散々である。運転手が、である。

運転手が居ても居なくても、馬凄は走行する。
なんのタメに座ってるかは、もう問題ではない。バスには運転手は必要だからだ。
たとえ、馬が引いていてもだ・・・

進行ルートは変ってしまったのだが・・・・

バスは『魂出』には向かわず、『無限坂』に向かうようにして Uターンをした。
『魂出』は「たまで」と読み、実在する地名です。
字は違いますが(笑)
「たまで」行きのバスも、ちゃんとあります。

キュルルルルルル・・・ヒヒ〜ン・・・

そう、無理やり痢煙が、運転手を座席から連れ出したので、
運転手の腕か足かのどちらかが、『行き先変更ボタン』等に触れたのであろう。
安直な話しである・・・

パタパタパタ・・・ヒヒーン・・・ガチャ。

外の行き先案内が『無限坂〜黄泉行き』と、なった。

ガタン・・ガタン・・・

 急な進路変更で、バスは激しく揺れる。
痢煙は、激しく揺れる車内、運転手の襟あしを捕まえて、
肴の側まで、運転手をひきずって、殴り掛かるように聞いた。

『なんて読むのよ!!』

なんて強引だ。
今夜は酒が切れているのか、それとも悪酔いなのか、
いや、もしかしてバス酔いなのか。
そうであったとしても、彼女を悪く思わないで欲しい。
なぜなら、彼女の魂は酒で出来ているから・・・
出来てないっ(笑)
んぐ・・・

運転手は崩れた顔をしているが、相当困惑しているようだ。

彼の頭中で、たくさんの疑問が沸いているのであろう。
半分脳味噌が吹っ飛んでいるせいで、
漢字が読めないという、おそれもあるが・・・どうだか・・・

ガタ・・ガタ・・ガ・・タ・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・

無駄に、この二人の時間は過ぎて行く。

ガタ・・ガタ・・ガ・・タ・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・過ぎてゆく・・

すると、その無駄な時の流れに終止符を打つかのように、
肴の首筋、そう、あの文字に変化が起こる・・・

・・い・・け・・に・・え・・・

『生贄』の文字の横に、なんと、親切にも、ふり仮名が現れたのだった。
肴自身が、イライラして、じれったく思ったのかもしれないが、
それは、唐突に浮き出てきた・・・

絶対、肴は、苛ついている・・・と思う。そんな感じの乱雑な文字だった。

「あっ!読めた!!」

痢煙は、興奮し、つい、運転手を投げ飛ばしてしまった。

襟投げ・・・と言うのか・・・

運転手は運転席まで、一気に転がっていった。

グワシャン!!

・・・・・・・・。

車内は、とても暗い。

 首のない乗客の陰が異様な雰囲気をかもし出している。
走行中、痢煙は、席に一度も座っていない。

痢煙は、肴を見ている・・・
何かを感じる、嗅ぎとったかのように・・・

そう、痢煙は初めて、肴が置かれている立場を理解した。

今!!・・・・。

「肴ちゃん、生贄なの?死にかけてるの?・・・この、
この、バスって・・・もしかしたら、あの世へ行く・・バ・・ス・・なの?」

ゴゴゴゴゴゴ・・・・(痢煙の耳なりの音)

その時・・・

痢煙は、はじめて、はじめて、自分が乗った、このバスの怪異に恐怖した!!

「ああ!!恐いわ・・・」

 窓から入る明かりの量が減ってきている。
窓の向こうは、すごい霧で、一寸先も見えない、暗霧の世界・・・
それでも、バスは走っている・・馬に引かれて・・・

運転手も気を取り直して、座っている。

バスの揺れは、単調に続いた・・・・

ガタゴトガタゴトと、単調に・・・単調に・・・それは、続いた。

目指すは、無限の坂・・無限坂・・・そして、その先には、黄泉の・・く・・に・・

ヒヒーン・・・・ヒヒーン・・・ブルルルルルル・・・・

急に馬が嘶いた。

ガタッ!!バカッ!!ドガッ!!キキキキキーっ!!

激しい音と揺れで、痢煙は倒れそうになり、咄嗟に肴の髪を掴んだ。

ピキ!!

また少し、肴の首に亀裂が入った。

「あっ、これはヤバイかも!もっもげそうや・・・気をつけなくちゃ。」

そう言いながらも、バランスを取り戻すまで、肴の髪を離さなか ったのは、
あたりまえである。

ピキ。

バスはいつのまにか停車していた。

ここは、無限坂の前。鉄橋の梺といえばわかるであろう。
はい、「どぶおちろ遣い」が住む犬屋敷「きくや」前ですね?
「おろし 錐女の章」の、死悶が、写真の調査に行った場所。

『馬凄停(バス停) 犬屋敷前』

馬が場踏みをしている。

犬が吠える。

ブガガガギーン・・・・

バスの扉が開いた。

すぐさま、痢煙は、扉の前まで行き、乗ってくる人が居るか居ないかを見に行った。
もちろん、痢煙がそれをする必要はまったくない。

痢煙はバスの扉から外を覗く。

「え?なんで、ここに止まってんの?早く行こうよ。』

痢煙の口から意外な言葉が漏れた。

大きな犬の陰が、この霧の中をうろついている。
実態は見えない。

大と小の陰がある・・・

揺ら揺らと、その陰犬が踊っている。

薄光と濃陰の交差。

あの晩の影絵と同じだ。あの時の陰なのか・・・ああ、錯覚しそうだ・・・
意識が遠のいていっては、戻ってくる・・・ああ・・嫌だ・・・

高足 痢煙の額に汗がじっとりと浮かびあがった。
それと同時に鳥肌が立っている・・・

「ああ・・う・・ああ・・扉が開いてしまっているわ・・あ・あ・来てしまうわ・・うう・」

瘴気が満ちはじめ、一寸先も見えない夜霧。

蒼い狐火、踊る犬陰。

馬の嘶きに、犬の声。

おぞましく演出された空間の奥深くから、

白いシミーズを着た・・モノが、近づいてくるのがわかった。

ああ・・うう・・あああ・・・嫌だ・・・。

そもそも、なんでバスに乗っている設定になったのかと言うと。
痢煙と花枝坂奈は、中学の同級生なんですが、その中学の時の
遠足で、バスの席が隣だったんですよ。
坂奈ちゃんが言うには「痢煙はずっと、変な奇声を発していた」らしく(笑)
本人は全く覚えてないんですけどね、それをs嬢に言ったんですよ、坂奈ちゃんが。
そしたらs嬢、すかさずネタに使うし(笑)

そんな訳で、この「馬が引く」変なバスに乗って、
セクハラ発言を撤回しない肴ちゃんを酷い目に合わすべく(笑)
まだ少し、バス旅行は続くみたいですね。


つづく・・・