鬼送りの章 *鬼隠しの子供達*  おろし!! #28 †馬凄蛾凄縛髪(バスガスバクハツ)1†

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 青い霧が街灯の明かりを遮断し、一寸先は暗黒の道となる。

・・・黒々と蠢くモノのは、人々の溜息・・・それが、闇夜に充満する・・

夜風には、まだ冬のなごりがあり (ビールの飲みすぎという噂もある)
震えるほど肌寒い・・・

私がビールを飲んだ後に、いつも「寒い寒い」って言ってるんですよ。
それが元ネタなんでしょうねぇ。

だから、この寒さをまぎらわすために、
わたしは、胸元から煙草を取り出し、おもむろに一本吸い出した。

『セーラー服ピュアなシモン』は少しエロスな味がする煙草だ。

私が吸っていた煙草が「セーラムピアニッシモ」だったんですよ。
「煙草の銘柄は何?」と、s嬢にネタ集めされましたねぇ。

わたしは、指でフィルターをなぞりながら、空を見上げ・・・思う。

・・・何を・・わたしは、待っているのだろうか・・・

ブルっと寒さが襲う・・・

車はまったく通らない。
人影はわたしの影をのぞいて、誰の影も見当たらない。
わたしは、地下鉄の駅へ続く、この地下道の出入り口で、
ひとり 何かを待っている。

そう何かを・・・ 待っているのだ・・・

すこし霧が濃くなり、やがて、その粒が大きくなり
ぽつりぽつりと、雨が降り出した。
雨と言っても、水滴がたまに落ちるような雨なのだが
わたしは、傘をさし、その何かを待っている。

ぽつ。

ぽつ。

ランダムに鳴る雨音が、この濃霧の夜に響いている。
わたしは、煙草の灰を、ポトリと落とし、もう一服した。

スウ・・・ハァ・・・・

どれほど時間が経ったのだろうか。

ぽつ・・・ぽつ

雨は先程と変わらないような感じで降っている。

ぽつ・・・ぽつ

雨で、衣類が濡れるというよりも、湿った空気が衣類に水を含ませて行くような感じだ。

じっとりと冷たく・・そして、わたしの体温を奪ってゆく・・・

ガサ・・・

ふいに携帯の画面を見た。

チチ・・・

着信履歴がある。
見たことも無い番号だ。

わたしは、興味本位で発進ボタンを押した。
携帯電話は、その着信番号をなぞり、電波を発信する・・・

プップップッ・・・トゥルルルルル・・・・

呼び出し音が、この雨夜に響く。

出ない。

五回ほど呼び出し音が鳴ったと思う。
わたしは、電話を切った。

プツリ・・・

午前二時・・・現在の時刻・・・
携帯の時計はそう示していた。
ここで思い出してみて下さい。
前回の「鬼送り」の中で、「赤悪欲照(あかおよくてり)」が
自分の部屋で鬼の訪問を受け、必死でドアノブを押さえている場面。
ベッドの上に置かれた携帯が鳴りましたよね?
それがこの時、痢煙が興味本位でかけてみた電話なんです。
「見た事もない番号の着信履歴」というのも、「鬼送り」の中で
欲照が痢煙にかけてきた時のもの。
「出てくれないか・・・」って言ってた時のものです。
ちゃんと繋がってるんですよね〜。

ピチャン・・・チャピ・・

水音のみが響いている。
わたしは、何を待っているのか。

わからない。この夜の湿った空気が、わたしの肺に侵入し、
酸素の代わりに毒を、わたしの脳に送り込んで、
わたしの思考回路を粉砕でもしたのか?

・・・ありえない・・・

わたしは、仕事を終えて、まっすぐに家に帰ったはずだ・・・
そして、いつものようにコンビニ弁当と酒を飲み、
酔いながら蒲団に・・・

そうだ・・蒲団の中に入ったまでは覚えている。

ジャリ・・・・?

そういえば、わたしは、靴を履いていない。
素足のままで外に出ている。そして、この場所にいる・・・

もしや・・・夢なのか・・・いつものように寝ぼけてるんだ・・・

いや、夢ではない。
現実なのである・・・何故、そう言い切れる・・・か・・わからないが・・・

もし夢であったとしても、今は覚める気配がない。
なら、現実なのであろう・・・そう、今思えてしまう・・・

ガサ・・・シュボッ・・ボッ・・・

わたしは、新しい煙草を取り出し、吸う。
『セーラー服ピュアなシモン』の甘い香が、モヤモヤと辺りに立ち込めた。

スウ・・・ハァ・・・

そして、何気に、雨音を数える・・・

ぽつ・・・ぽつ・・・・ぽつ・・・・・・

その音の間隔が幅広くなっていく・・・

そして、その間隔に異様な音が混じる・・・

ちりん・・・

ちりん・・

鈴が鳴る。

・・・来た・・・

・・・く・・何かが来る。 そう何かが!

・・・嗚呼!わたしの待つものが来る・・・

ボッ・・・ボッ・・・ひゅるるるるるるる・・・

幾つもの鬼火がゆらゆらと蒼い焔を放ち
漆黒の闇を照らす。

ゆっくり ・・・

ゆっくりと・・・焔が近づく。

そして、この漆黒の中に、暗い暗い、
得体の知れない霧が立ちこめる・・・のがわかる。

ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああっ!!

ビクンっ!!

異形の者の叫び。 身体がその声にビクッと反応する・・おそろしい・・

どろどろ・・・

どろどろ・・・

どろどろ・・・

そして、鼓膜に爪を立てたような痛み、この音・・・
アスファルト・・・そう、アスファルトが削られる音がする。

ガリガリ・・・

ガリガリ ・・・ギリガリギリガリリリリリリリリリっ!!

鉄と石が摩擦し砕ける音。

そして蹄鉄(ていてつ)の音と ・・・

う・・・馬の・・嘶き。

そう、いななき・・・が・・・

木々が揺れる・・・

ザワザワと揺れる・・・

地鳴りではない。

そう、地鳴りではないのだ・・・

この空間が揺れている・・・この空間が揺れている・・・

耳を押さえなくては・・・鼓膜が、鼓膜が破れる・・・

この周囲の建物の窓がきしみ出している・・・

ビルが揺れている・・・

わたしも揺れている・・・

わたしは、激しく揺れているこの中で・・・
その異様な音が来る方を見ている。

暗雲がみるみるうちに立ちこめ、
また1つ、また1つと、鬼火が現れ、それを先導する・・・

どっどっどっどっ

どどどどどどどど どどどどどどどどど・・・・・

ガリガリ ・・・・・ガリガリ

ガリガリ ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ

ガリガリ ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ

ガリガリ ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ

ヒヒ―ン。

ガリガリ ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ

ガリガリ ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ

ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ・・・

うっ・・・

馬が・・・・

馬が・・・・

馬がバスを引いている!!

その馬は漆黒の鬣をなびかせながら
嘶く怒涛に迫ってくる。

ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・

二頭いる。

首のない馬二頭が、赤いバス、そう赤バスを引いているのだ。

何故引く!!

何故嘶く(いななく)!!

何故!!

赤いバスにはタイヤ(ゴム&チューブ)は、装着していない。

ホイールのみ。

火花を散らし猛進してくる。

ずっと前、家の近所で、ホイールしかない自転車で
走ってる男の人を見た事があって、その時もガリガリいってたから
それを思い出してしょうがないです(笑)

そして、止まる。

あまりにもの急停車!!

ギガギキキキキキキキ・・・・・キッ・・・・

凄まじいカナキリ音とともに、バスは止まる・・・・

ブルン。

ブルルルルン

ヒ〜ン。

馬が鼻をならし、ヒズメをとく。

首から上はない。

いったい首は・・・どこに・・・何故・・鼻息がする・・・

しかし、そんな疑問に思う余裕がない・・あまりにも・・
凄すぎる・・・この・・馬・・否・・バス・・・好奇心が湧く・・・
ふつふつと・・・湧く・・・

モハッっと、血が滴り瘴気が立ちこめる。

ブガガガギーン・・・・

バスの扉が開く・・・乗せてくれるのか?・・・

ぼう・・・・

足元を鬼火が照らす。

わたしは、吸いかけの煙草を落してしまい、そのまま立ちすくしている。

呆然と・・・しかし、心の臓は、早鐘のように・・・

クルッ・・・

バスの運転手がこちらを向き手を差し出す。

顔が半分欠けている・・運転手の顔が・・・

はっ・・・息を飲む・・・

赤黒い肉がテカテカと光っている・・・

ボタリと運転手の左手が落ちる。

!?

ゾワッと百足が、その手を避けるかのように、車両内を駆け巡った。

・・・心に何かが手を差し伸べる・・・わたしの・・だから・・・

わたしは、震えながら一歩バス内に足を踏み入れた。
ノンステップバスなので段差がない。
わたしは、何て乗りやすいバスなんだろうと思った。

このバスにもモデルがあるんです。
ループのように、一定区間をぐるぐる走ってて、
どこまで乗っても100円っていう小さいバス。
車体が赤いので、通称「赤バス」、そして確かにノンステップバスです(笑)
うちの実家の近所を走ってるんですよ。
それにしても、そんな奇妙なバスに乗る時に
「なんて乗りやすいバスなんだろう」
って、そんな呑気な事思えへんって(笑)

グワッシャン!!

フロントガラスが割れる。
勢い良く首が転がり込む。

血まみれの黄色い帽子を被った園児の首。
哀しげにわたしの足元に転がってきた。
表情はまるで眠っているかのようだ。

そう、このバスは事故を起したバス。
血塗られたバスである。
原因不明の事故。

わたしは、直感した。
これは化け物に襲われたバスなのだということを・・・

バス内を見渡す・・・

バスの乗客者は、みな背筋を伸ばし座っている。
ざっと見た感じ、すべての乗客に首はない。

首は狩られたのだ・・・

この街では首がなくなることはよくある話である。
そうよくある話である。
だから、ないってば(笑)

「けけけ。早く魂払え。ここ、ここに魂いれるんや。
100日分の寿命やで!!オマエのな!!けけけ運賃払え〜」

崩れた顔の運転手は、いきなりそう言った。

少し、軽蔑した眼差しでソイツを見た・・・

そして、その声を聞きながら(無視)、後部座席を見る。

ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・!?

青暗い車灯の中に一人だけ首がついている女性の姿を見た。

『酒野 肴・・・どうして乗っているの?・・・』

高足 痢煙はただ呆然と彼女の方に目を向けた。

痢煙の心を、何かが支配してゆく・・・肴・・・何故・・・

 もはや運転手の声は聞こえていない。

そして、馬が嘶いた・・・それを合図に、バスのドアが閉まる。

しかたなく、運転手はハンドルに向かった。

バスが発車する・・・首無しの馬に引かれて・・・
そうだ・・いったい行き先は何処なんだろう?
そんな事は、今の痢煙には関係ない・・・彼女の心は例のものでいっぱいだ・・・

ガタン・・・動き出した・・・この恐ろしい乗り物が・・・

そう・・何故かこのバスに乗っている酒野 肴、
そして、知らずに料魂(運賃)をふんだくる高足 痢煙・・・

そんな馬棲旅行(バス旅行)、ここに始まる・・・・

酒野 肴(モデルは花枝 坂奈)がなぜ居るのか?
そしてなぜバス旅行なのか?
それはまた、次回にでもご説明しますね。


つづく・・・