鬼送りの章 *鬼隠しの子供達*  おろし!! #25 †鬼送り 一夜目†

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チョキン

チョキン

ふ〜・・・・・

チョキン

チョキン

チョキン

ふ〜・・・・・

チョキン

チョキン

チョキン

チョキン

ふ〜・・・・・

チョキン

チョキン

痛!!

『いたたたた・・・。毛を挟んじゃったよっ!まったく・・・』

チョキン

チョキン

ふ〜・・・・・

『浄無(じょうむ)〜。また、切った毛を床に落している〜』

『おう!!腰巾着っ。来たか。今日は良くこの毛が伸びる』

『春ですもんね。浄無のその毛はすごいですね〜』

 先程から、浄無と呼ばれている男が鋏を置いた。

ゴトリ・・・

その鋏には剛毛がこびり付いている。

この男は、指の毛が非常に長い人間である。
あまりにも長いので、鋏に毛が絡まるほどだ。

毎日のように、指毛を切っているこの男、

赤悪 欲照(akaku yokuteri)役職は浄無(浄化無常之守)
現代で言う常務だ。

『赤悪伝鬼(あかあくでんき)』

この日本で忘れられた鬼の概念を研究し、後世に伝える組織である。

しかし、現状は、ひどく腐っていた。

今では、形だけの存在になりつつある。

上の位のものは堕落し、今や、まともに働くことはなかった。

それでも、潰れることはなかった。

裏で、何をしているか分からない。

『生贄牡羊』の息がかかった組織だからか?


今日は、朝霧が視界を曇らせている。

その霧の中、一人の男がさっそうと歩いてきた。

赤神 丞。

彼はこの組織に加入している。

彼は他のメンバーとは違った。

彼の能力は本物である。

口だけの心霊オタクではない。

若手の者達は、彼の能力、彼自身に憧れていた。

だが、その能力を皮肉に思う輩がいる。
古い考えをもつ輩だ。

それは、その者の人気に嫉妬していたり、彼の美貌を妬んだり、
彼の能力を認めたく無い気持ちの固まりの者たち・・・
とくに、この赤悪欲照という浄化無常之守は、
執拗に彼を妬んでいる男である。

「浄無。ホラ、来ましたよ。あの胡散臭い奴が・・』

「ん?ああ、あいつか。いい気なもんだな。」

「最近、休んでましたよね。無断で・・・」

「能力が違う奴は、傲慢なんだよ。くっ・・・」

「そうですね。その点、浄無なんて、部下にも愛され
仕事も完璧ですからね。」

「ん!!そうか〜人気あるか〜。まあ、当たり前かな。
私みたいなものが、この組織にいるからだな。」

「そうですとも。赤悪伝鬼の鏡でしよ〜浄無は。」

「怨明師だったけ?。そんな能力あるのかね。奴に・・・
あったら見てみたいな。くっ。」

「ホント。眉唾ものですよね。ちょっと人気あるからって。」

「こんな仕事してるが、ホントはそんな現象なんかないんだよ。
鬼、幽霊、ましてや呪い、祟りなんてな。夢見てんの。みんな。」

「そうですよね〜そんなのあったら、この文明社会がひっくり返りますって。」

「そうそう、道楽だよ〜。刺激のない日本に、我々は夢を与えているだけ。
その夢は、私が考えてるんだけどね。
私の発想が商品化してるのにもかかわらず、
バカな部下の尻拭いはいつまで続くんやろうかねえ。ほんとに。
あいつは、古いよ。今どき、鬼なんてねえ・・・
まあ、私の出した本に影響された、いたいけな坊やってことだなあ・・・
まあ、私のファンのひとりかな?あいつも。」

「ん?浄無。見てくださいよ。あの顔面の包帯。それに指にも。
ああ〜ウソっぽいですよねえ。鬼とやり合った、と他の者は言ってるのですが、
いや〜彼のいつもの人気取りなんでしょうが。セコイですねえ。
まさしく、心が病んでいますよ。汚い男だよ。ああ〜いやだ。いやだ。」

「ふっ。鬼じゃなくて、喧嘩でもして誰かにやられたんだろう。
今どき、鬼なんているわけないんだよ。小さい男のセコイ人気とり。
ああ〜小さい男だ。まったく嫌な部下を持ってしまったよ。」

「そうですよねえ、でもね、浄無。
あいつ、高足痢煙に付き纏ってるらしいですよ。浄無のお気に入りの〜痢煙様に。
く〜どうやって、たらし込めたんだか。」
お気に入りなんか?(笑)

「なっ何!!ほっ、ほんとか、そ、それは!!く〜っ、なんて、イヤらしいやつだ!!」

「そうですよね〜クールな顔のわりには、ヤルことやっているって噂ですよ。あいつは。
いいんですか〜このまま、あいつを放っといて〜』

『なっなに〜!!おっおれの〜・・・!!く〜!!』

赤悪欲照は鋏をもつ手が怒りで震えていた。

「・・・浄化無常之守 赤悪欲照殿 報告書です。』

そう、赤神は赤悪欲照の背後に立ち入った。

ジョギ!!

毛を挟んだ・・・

「いっ・・痛〜〜〜いっ!!なっ、なっ、なっ〜!!毛がぽんぺええええええっ!!」

「じょっ浄〜無!!おっ、おいっ!!赤神!!無礼だぞ。無礼だ〜!!」

「報告書です・・・・」

「くっ、まあいい・・・ん・・?・・
おっ 赤神。そういえば、最近、鬼と戦ったらしいな・・・その報告書か?ぷっ!」

「・・・はい。」

「きっ君!!謝り給え!!それから、報告するのがスジだろうが!!」

「いいじゃないか、そんなことは。まあ、だけど、この報告書は読めないな。
嘘はいかんよ。嘘は。
まあ、どうせ、その傷もただの喧嘩だろ。そして無断欠勤。イヤらしいね。
本当は女に会っていたのだろう・・・くくく。やらしいな・・・ウソはだめだよ。
ははは、君・・・どうせならH報告のほうが面白いのに・・・」

「うまいこと言いますね。H報告・・・さすが浄無。鞭ふりまくりて〜。ぷっ!」

「そうですね。そのように書き直しましょうか、浄無。」

「・・・?」

「なっ、なんだとお!!あか、赤神っ!!きっ、貴様!!いい気に成るなよ!!
おっ、オニ、鬼にあったとか、調子ぶっこいて、おっ、オンっ・・ナの人気、人気とりやがって、
<<ああ〜痢煙さんまで・・・>>くっ、くそ〜!この能無しが!」

 罵倒が響く。

それを見る他のもの。

視線が赤神に集中する。

あるものは悲観に思い、

あるものは微笑んだ。

 赤悪欲照は、その報告書をクルクルと丸め、赤神の頬を何度も叩く。
赤い髪がその風圧でなびく・・・
赤神の眼が髪の隙間から見えた・・・
その鋭い眼光が、赤悪欲照を瞬時に恐怖させた。

「うっうあああああああああああああああっ!!」

その恐怖から逃れるかのように、
赤悪欲照は左手で、赤髪のあごを無理やり上げ、
そして、憎悪の念、嫉妬の念を放ちながら、
何度も何度も赤神の両方の頬を叩いた。

バシッ!!バシッ!!バシッ!!バシッ!!・・・

そして赤い髪をひっぱりあげ、

「はあ、はあ、こっ、この髪はなんだ。おっ、男が髪の毛、のっ、のばしやがって。
わっ、私の、きっ、綺麗な綺麗なこの、はっ、鋏で切ってやろうか?んああ?』

チョキ、チョキ・・チョキ、チョキ

あの、醜い毛がコビリついた鋏を鳴らした。

「いやなら、さっさと書いて来い!!バカやろ〜」

赤神は無表情のまま踵を返した。
赤い髪がくるっと回転の流れにのった・・・
少し口が切れて血が滲んでいる・・・

「鬼が・・・」

微笑みながら、そう、小さく囁いた・・・


つづく・・・