錐女の章 おろし!! #12 † 血だらけのオクトパスピック †

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キ〜ン・・・
キ〜ン・・・

山間に響く音。
これは現実の音ではない。
精神界だけに響く音だ。
ある精神と精神がぶつかりあう時に生じる音。

これは " 精神のハーモニクス "

赤い髪を風にあおられ、白い素顔が見える。
ゆっくりと瞳をあける。
赤い義眼が月光を受けて、いっそう赤く見える。

赤神 丞は、恐山のフモトにある、代わり映えのしない
どこにでもあるような、大きな桜の木の下に立っていた。

「ここだな・・・」そう、ぽつりと言うと

赤神は右手を翳し、九印をすばやくきった。
風に真言が運ばれる。

そしてその風がサササと木の葉を飛ばし、闇夜に茂る木々の葉を揺らす。
桜の木には冬だとゆうのに、淡い色をした花が一瞬で満開に咲く。
そして散り、そしてまた咲く。その行為を繰り返すうちに、
赤神の姿は消えていた。

印により、この世とあの世の狭間をつくることができる。
赤神は錐女の道をたどるため、軌跡をたどり、
微かに残った空間のひずみを見つけ出し、後を追ったのである。



 高足痢煙は三途の川、その岸に立てられた屋台の柱に
額を打ち付けられていた。

痢煙は必死になってコメカミから柱に打ち付けられた錐を抜こうとするが
抜けない。

なんぼがんばってみても抜けない。
頭と柱が繋がっている状態が何日も続いている。

何のタメに?

錐女は三途の川で死した人の魂たち相手に商売をしていた。
そう、たこ焼き屋である。
このたこ焼き屋にも、ちゃんとモデルがあるそうです。
s嬢の当時の職場からほど近い道に、夜にだけ出る屋台。
提灯がぼぅ〜・・・っと灯っていて、なんか怪しいんですよ〜。



---生前、彼女はたこ焼き屋を営んでいた。
しかし、ある晩、呑んだくれの客が酔った拍子に屋台を蹴り壊した。
それがもとでその客と口論となり、とうとう取っ組み合いの喧嘩へとなった。

そして気がついたときには、自らの商売道具で、
酔っ払いのコメカミに思いっきり突き刺していたのだった。

何かが私のなかで産まれた。

そのような感覚だった。
そして彼女は、屋台に火をつけその場をたち去ったのだった。

暗闇の町を走る。
遠くでサイレンの音が聞こえる。

彼女は走る。走る。

自問自答しながら・・・

警察が私を捕まえに来る。

嫌だ・・捕まるわけには・・・

そんなの嫌だ・・・わっ・・わたしには・・・

家族!?

そうだ。わたしには幼い子供が二人居る。
その子たちはどうなるのだ?
私が捕まれば、この子たちは?

父親はいない。
私がいなければ・・・

どうやって・・・生きていくのだろうか・・・
逃げなきゃ・・・絶対に・・・

キキッ!!

ドーーーーーーーーーン・・・

ポタ・・・
ポタ・・・

ポタ・・・
ポタ・・・

血の雫が滴る・・・

電柱の杭に頭が突き刺ささり、吊るされた女性・・・

それでも、その手には、商売道具、
血だらけのオクトパスピックを握り締めていた・・・

たこ焼きの錐は、オクトパスピックって言うのかな?

彼女のことはなんのNEWSにもならなかった。
何かの圧力が、かかったことは言うまでもない。
何のためにかは解らないが、人間社会においてよくあることだ。
そうよくあることだ。
ないよ(笑)

彼女の子供たちはというと、その事件後、忽然と姿を消した。
学校にも行っていないようだ。

近所の人も奥さんも、引越しかそれとも夜逃げだという解釈で
通ってしまったようだ。

彼女が死んだことは誰も知らない・・・


つづく・・・