鈎針婆の章 おろし!! #37 †軍鶏とビニール†

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 土埃が舞う。
乾いた夜風が道路の砂塵と戯れあう。
街路樹たちの葉の囁きをよそにして・・・

月光が届かない路地裏。
モノトーンの世界が広がる影の世界。
高層の建物が闇を創っている。
その中の、一番濃い闇に白目だけが浮かび上がっている。
大きな瞳・・
光を受けると・・赤く輝く眼・・
漆黒の衣をまとう 闇の麗人
赤神丞。

赤神は、建物を背に、闇に潜んでいる。
息を潜め、印を組みながら・・

「厭なものが憑いてきている・・な・・」

赤神は、ダンナアの屋敷を出た時から、何らかの気配を感じていた。

それも複数の生きているかどうかわからないモノの気配だ。

「物怪か・・・いや・・それよりも・・厭な・モノか・・」

その厭な気がだんだんと、赤神の間合いに入ろうとしている・・

この路地裏辺りに来てから、憑く憑かずの距離を保ってきたモノ・・
が、いよいよ仕掛けたきた・・

まだ姿は見ていない・・

「黒丸は、わたしとの距離を半径1Kmに保って移動しているハズだ。
鋼丸、お前は、わたしの楯となるように動け。黒丸との伝心はいかなる場合でも閉ざすな・・
いいな・・」

赤神と同じくして、闇に潜んでいる 鋼丸 という女に命令を下した。

「はい、では、いよいよ交戦を・・・」

鋼丸は、無表情ながらにも、何か嬉しそうに答えた。

「血が滾るか?鋼丸よ。」
「はい、身体の芯が火照っています・・・」

「軍鶏の血か・・・闘鶏の血だな・・」
赤神は、少し笑った。

軍鶏・・・
鋼丸と呼ばれた女、式神。

赤神は、式を良く使う。
この女達、黒丸と鋼丸は、もとは軍鶏なのだが、
今は人の形を成している。
なぜ軍鶏(シャモ)なのか?丞がニワトリが好きで、ニワトリの絵ばっかり描いてた
時があったんですよね。

ナイスバディの女だ。
グラマラスな身体に、ラバースーツをまとっている。
ラバースーツ。丞が好きなんです(笑)

男を悩殺できる容姿だ。
そのラバースーツは、黒鉛色に鈍く光っており、
エロスな身体のラインをくっきりと浮かび上がらせている。
豊満な胸の形は美しく、腰もくびれている。
露出部分は唯一、右の太股の辺りに切れ込みがあるだけでる。
その切れ込みから、白い素肌を少し覗かせている。
これ!昔LUNA SEAのSUGIZOが履いてましたね、切れ込みのあるパンツ。
丞がそのパンツが大好きで、それをいつもs嬢に言ってたんですよ。
元ネタはそれです。

その黒と白のコントラストは何とも言えないものだ。
筋肉質な身体がよりいっそう彼女たちを美しくさせているのだ。
そして・・鳥ゆえに、背には、小さな羽根がついている。

この妖艶たる軍鶏達の髪は長く、
一人は銀髪のモヒカン、一人は黒髪のモヒカン。
髪の色でもどちらが、鋼丸、黒丸かと言う事が判断できる。
モヒカンと言っても、髪が突っ立ったモヒカンではない、
髪は腰ぐらいまであり、横に垂らしている。
髪は、しっとりと濡れているのだ・・その濡れ髪すらも艶かしい。
その髪の隙間から鋭く光り輝く眼。
鳶色の眼。鳥だからといって夜目ではない・・
彼女の眼はそのようになっている。
闇に潜むモノを見つけられる鋭い眼だ。

この式神を使い、赤神は、『彼の地』を目指す・・

内に鋼丸。外に黒丸。

鋼のような身体を持つ鋼丸は、赤神の近くに置き、敵を討つ。
剣と盾のような存在。

そして、あらゆる陰を支配、潜入することができる黒丸を外に放つ。
弓矢のような存在。

攻防の策。攻撃と防御ともに完璧である。

その狙撃手的な存在、黒丸はというと、
赤神の位置より、半径約1Km先のビルの陰に潜んでいた。

ここは庵からそう離れてはいない・・・
亡無薔(NAMBA)のはずれ・・
高層マンション街・・静かな街である・・

サラサラ・・ララ・・

黒髪が艶やかに風に流れる。
黒丸と鋼丸は、双卵から生まれただけあって、
両者ともまったく同じ顔。
そう、顔だけなら見分けはつかないであろう・・

黒丸は、顔に墨を塗り込んでいる。
白い素肌も見えない・・白目だけが闇夜に浮いている・・

美しい顔は闇の中で見ても美しい・・のだ

カチ・・
黒丸が、左足首に装着された小太刀の鯉口を切った。

漆黒の刃である。
月光に照らされないよう、顔と同様に墨が塗られている。

暗殺者に相応しい黒丸。

彼女の能力は、先に述べたように、陰に潜む能力。
これは、単に陰に隠れるということではない。
彼女は陰と同化することができる軍鶏なのである。

つまり、陰には別の空間があり、その亜空間ともいえる闇に、
彼女は入ることができる・・

影に入っているのか同化しているのかは定かでなないが・・

その潜入した陰や影の中を移動し、
または、陰から影へ、影から陰へ
影、または陰が、あるところに、彼女は潜むことができるのだ・・

まさしく、暗殺者向きの能力を兼ね備えた式といえよう。
今まさにその軍鶏が、何らかの獲物を、その眼に捕らえたのだ。

ものすごいスピードで、陰から影へと移動し、
獲物に近付く!

足を手のように使う。

ブワッ!

砂塵が舞う!
彼女の黒い羽が舞い散る!

彼女の蹴りはとてもしなやかに、獲物の首筋に届いた。

左まわし蹴り。

足首には小太刀が装着されている。
闘鶏の足に装着された小刀と同じ風貌である。

ズバッ!

月空に、首がとんだ。

その飛んだ首が月光を受け、アスファルトに影を落とす。
その瞬間、黒丸は、その陰に身を滑り込ませる。

第三者に姿を見せないために・・・

舞っている黒い羽も、雪のように消える・・

ドサッ・・ンン・・

首が鈍い音をたてて、道路を跳ねた・・

攻撃する時のみ陰から姿を見せる黒丸。

影に忍べば、相手に悟られずに近付く事ができる。

そうすれば、背後から首を刈ることも容易だ。
敵は黒丸の姿をとらえる前に絶命していることになる。

人間がターゲットの場合は簡単では、あるが、
化け物はそうも言っていられない・・

化け物は、影を持つモノもいれば、持たないモノもいる。
持つモノはいいが、持たないモノに対しては、逆に接近戦を行わない。

彼女は狙撃という術をとる。

黒羽矢と呼ばれる弓矢を用い、物陰に潜み、
遠距離から、静かに射ぬく・・
もちろん、赤神の退魔の術がかけられた矢なので、
射ぬかれたモノはタダでは済まない。
大抵の化物は、一本の矢で、消え去るであろう。

「これで4つの首を・・刈った・・統べて人間・・とり憑かれた人間・・
この辺りの浮浪者・か・違う・・これ・・タダの駒・・・厭な気配・・まだ・ある・・」

黒丸は、また陰へと身を潜めた・・

風が出てきた・・・
秋風が吹くこの季節・・・

天が日に日に高くなる。

ざざざざざざ・・・・・

突風が吹く。
枯れ葉が舞い、空高くビニールの袋が舞い上がった。

黒丸は、陰から陰を移動し、そして天を仰ぐ・・

月空に飛ぶ、人工的なもの。

ビニール。

まるで、我々の後をつけるかのように飛んでいる。

「私が、進む方向は、赤神様が進む方向。この風も同じ方向に進むのか・・・
腑におちない・・・先の獲物といい・・赤神様を倒すのなら・・・もっと・・・」

黒丸は、いっそう陰から離れ・・月空に舞うビニールを射落とそうかと
思ったが・・地の利が悪いと判断し・・仕掛けるのを戸惑った・・
その時・・

厭な風が・・また吹いた・・

 赤神は、歩いている。

何人かの刺客らしき者を始末し、先を急いでいる。

彼もまた、なぜか腑におちないでいた。

あまりにも弱すぎる敵・・・

もし、あの組織が送りこんできた刺客なら、こうもいかないだろう。

何か策があるにしろ、これでは、足留めにもならない。

だが、あの殺気はまだ続いている・・・
それも、すぐ側まで近付いている・・・

これが本命なのか?
確実に間合いが縮まっていくことに、
敵の恐ろしさを感じざるにはいられなかった・・・

「鋼丸よ。厭な風が吹いてきたな・・・」

街路樹の葉が、せわしなく、悲鳴にも似た音をたてはじめている・・・

「はい・・この風によって・・何かが運ばれてきている・・ような・・感じがします・
黒丸の警戒する心も感じました・今は・黒丸の気配は・・途絶えています・が・・・」

バサバサ・・バサ・・
何かが空をよぎった・・・

影が道を横切る。

赤神は、空を見上げた・・・

空高くに数枚のビニール袋が舞っている。
勢いよく上昇する袋もあれば、ふわふわと舞う袋もある。

そのうち、数枚の袋が、すうっと、赤神の前へ舞い降りてきた。

アスファルトの上に流れつくかのように・・・

赤神は、足をとめた。

赤い目はそのビニール袋を凝視している。

鋼丸が赤神を守るように動く。

空気の流れが変わる・・・

紫の煙り・・瘴気のようなものが、何処より流れ・・立ちこめる・・
その禍々しい瘴気が赤神達の足に絡み付くかのように、
幾層もの尾を引く・・

それは視覚的にはっきりと見れる・・強力な魔・・・の力・・

魔の降臨を意味する・・

やがて、その瘴気は渦を巻き、
その舞い降りたビニール袋の口・・に・・入り込んでゆく。

『こ・・こやつ・・・』
赤神は、思い出したかのように呟く!

そう・・何かがはじまろうとしている・・・
その袋に何かがおころうとしている・・

未来永劫に続く・・業(カルマ)のうねり・・
親から子へ受け継がれる因縁の叫び・・・
怨み、妬み、人の醜い思念が浮かんでは消え、
統べて袋の中に入ってゆく・・

「赤神・・さま・・・」

鋼丸は、固唾をのんだ・・・そして、その様子を見守る。

動けないでいる・・
二人の強者が動けないでいる・・

魔の降臨の際に生じる空間の亀裂・・と
瘴気から身を守る術は・・その場を動かない事・・
瘴気に当たれば・・身を業火に焼き尽くす痛み・・

赤神は、既に小さな結界をはっている・・

ジジジ・・バチバチ・・バチ・・

髪の毛に静電気が走る・・

モワ・・・

突然、どす黒いガスのようなものが、袋から吹き出した。

ダイオキシンが含まれている黒煙。

黒い煙りがまるで人間のような身体を形どってゆく。

もこりこ・・もこりこ・・・
もこもこ・・・

それは、まるで、袋を被った人間が、道路に仰向けに寝ころがってい
るといったような・・・姿勢・・ヒトを形どる・・

次第に黒煙は、煙りというモノではなく、人間の肉体と同じモノ・・
物質・・に変わっていく・・・生々しい濡れた肉塊・・

ビニール袋を被った人間のような魔が3体、
道路上に転がっている。

この街ではよくあることだ。
そう、よくあることだ・・・
だからないって(笑)

裸の成人男性の寝転がり・・

奇怪な現象。

怪奇現象。

それは現実。
それは猥褻。

風はいつのまにか・・吹くのを止め、
無音の世界を創りあげた。

今夜の風は意志があるかのように・・・変貌する・・

そして・・その中にある・・静寂。

静寂だけが、彼等、赤神、鋼丸、
そして・・このビニールを被った男達を、甘くソフトに包み込む。

そう、このビニール袋を被った者は男である。
先ほどに述べたとおり・・成人男性・・・
この怪し気な者たちは、男子たるモノを持っている・・・

つまり、全裸の男が、頭にビニール袋を被り・・
目の前に寝転がっているのだ。
そのビニール袋には、それぞれ某スーパーの店名が印刷されている。

そのチープなロゴが、奇妙な空間、
このモノトーンの夜に華をそえている。

『スーパーの袋』である意味は・・・

赤神は、目を細め、眉間に手をあて・・ああ・・とため息を漏らし、
この奇怪な猥褻な・・情景を眺めるしか術は・・なかった。
強い赤神が、なぜ術もなく眺めるしかないのか?
それは丞が、全裸の男の人が苦手だからなんです(笑)
何でもネタにするs嬢(笑)

甘い優しい夜風が、赤い髪をサラサラとなびかせ、
白い袋はカサカサと音を響かせるのであった・・この猥褻な夜に・・

どうなる、赤神丞?!


つづく・・・