鈎針婆の章 おろし!! #76†ザ・コーン†

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赤いプラスティックが散乱する。

『これで・・・我らは使命を全うしたんだ。』

それが、我々の役割。

与えられた役割。

これで・・再び眠りにつける・・・

果たしてそうなのか?・・

与えられた役割・・これが、本当にそうなのか?

本当に、これで・・再び眠りにつく事は出来るのか?

当初は、これで眠りにつけると思っていた・・いや、思うようにしていた。

そう・・彼の声を聞くまでは・・・

彼は云った・・・

『お前らは、何かを守らされるためだけに、ホモサピエンスに製造されたのだよ。別に、自然の理の中で、生を授かったワケではない。自然界に存在してはならない存在。お前らの存在は、くだらないホモサピエンスのオモチャを守るためだけの再生なんだよ。・・くくく・・お前らも・・本当はもう分かっているのだろう?自分らの存在が、無意味だという事に。』

そう・・我々は、彼が云う通り、深い眠りから無理矢理目覚めさせられ、新たな役割を与えられた"存在”。

我々は、遙か昔に、この地球、七つの海の何処か、暗く深い海底を枕にして、
二度と目覚める事のない深い眠りについた。

何万年、いや何千万年も前だろうか・・・

そう、僕らは与えられた役割を全うし、すでに眠りを許され存在。

つまり・・死んでいた・・・のだ。

なのに・・・我々は、あの下劣な種、ホモサピエンスによって、新たな物に作り変えられた。

赤や青、緑などの三角錐の形をした静物に・・・

そして、我々の意志とは関係なく、新しい役割を強制的に与えられた。

我々が動けない事を、話せない事を良い事に・・・ホモサピエンスにメッセージを与える役割、
目印となる役割にさせられてしまった。

メッセージ、何故我々がホモサピエンス同士のコミュニケーションの道具、
メッセンジャーにならなければならないのだ。
何が「この先は危険」「進入禁止」「通り抜け禁止」「はみ出し禁止」だ。

メッセージは、時と場合、使い道により変異はするが、決まって、我々の背後には、
某かの危険があるではないか。

我々の安全は、まったくもって考えられてはいない。
ホモサピエンスのパートナーでは無いという事は明白だ。

あるものは車に激突され、粉砕する。
あるものは、何もしていないのに、蹴られ、踏みにじられ、最後には、
小便をひっかけられてしまう。

なんたる侮辱。

我々は、再生させられた時に、“静物”という呪をかけられた存在。
ただそれをじっと我慢していなければならないのか?
そう製造された。そう創り直されたと割り切ればよいのか?

隣りのやつが、車に激突し、粉々になったとしても、
ただ黙って、己の番を待つだけ・・・

それで本当に良いのか?・・・

彼は云った・・・

『忘れたか・・・お前らは、何万年も前、この地球で最強だった生き物だ。そうだ、ほ乳類は、単なるお前たちの餌だ。忘れたか・・・あの栄光と誇り高き精神と、あの強さを。お前らは、再生とともに綺麗さっぱり忘れてしまったのか?只々、人間の置物として、このまま成り下がるのか?もし、彼の栄光を取り戻したいという気持ちが少なからずあるのなら、私が力を貸そうではないか・・ホモサピエンスがかけた呪を解いてやろうではないか。魂あるモノどもよ。』

そして、我々は、彼の声に賛同し、憎きホモサピエンスに反旗を翻した。

彼こそ、我々の指導者。我々を導いてくれる。

“合成人間”の彼こそ、我らの長である。

手始めに事故死したホモサピエンスの血をすすり、肉に寄生し、
ヤツらの運動能力を得た。

静物から動物への変化。いや、これぞ進化だ。

あの栄光を取り戻す事が出来る。
ホモサピエンスをこの地球上から排除すれば。

赤いコーンが、潜行モード、ヤドカリスタイルで、建物にびっしりと貼り付いている。

頭(三角錐)に響く彼の声。

『赤神を殺せ。』

ゆっくりと、戦闘モード、2足歩行モードに変化する。

白い足、白い腕が、コーンより出てくる。
そして、スキンヘッドの人頭がゆっくりと現れる。

地面にブリッジをしているような体勢。

ゆっくりと、地面に着く両手を離し、まっすぐに立ち上がった。

無毛のホモサピエンスの身体がヌメリと輝いている。

性別は雄。

股間にコーン。守る意味は、そこにはある。

ザ・コーン。

ホモサピエンスハンター。

恐竜の血が流れているため戦闘能力は以上に高い。

赤いコーンサック。

青いコーンサック。

黄色いコーンサック。

工事現場カラー、イエロースケルトン。

カラーも色々。

カラーによって能力、そう、パワーもスピードも違う。
どこにでもある赤コーンは、一般兵士であるため、能力も平凡である。

コーンに貼られた反射ステッカーは、階級を表している。
二本なら、二等兵。
三本なら、三等兵といったように。

赤コーンは、2コーンで1組とするが、数が多いので、10コーンで1組とする場合がほとんどだ。レッドーコーンは、股間、コーンを繋ぐ連結棒を使い、秘技アクロバット槍術で、攻撃するのが基本パターン、攻撃プログラムである。

そんな彼ら、赤コーン達を取り纏めているのが、司令塔ビックコーンだ。
高さ2メートル以上もある、超特大コーン。
彼をコントロールする事で、森魚は、複数のコーンを同時に操作可能にしている。
巨大なコーン故に、身体は硬く、攻略は至難だが、まずは、このコーンを破壊する事が先決だろう。

しかし、中には、この司令塔を介さない、少数で構成された部隊もある。

赤、青、緑、ピンク、黄色の5コーンの部隊は、
『ゴコンジャー』と呼ばれている特殊部隊である。

別名サッカー(サック)部隊。

彼らは、寄生する死人(五人)の精子から作った『精巣ボール』でサッカーをし、
それを蹴り込んでくると言う、世にも恐ろしい攻撃方法を得意としている。

狙いは、ゴール。人の顔である。

精巣ボールは、人に当たれば、即破裂し、そのボールの中身(腐った精子)が飛び散る。
その内容物は、もの凄く臭く、それだけでも人を死に追いやる事が出来る。

また、その粘着力は強烈で、一度、接着してしまうと、二度と取る事は出来ないと言う程、驚異的な粘着力を持っているので、まともに顔に当たれば、窒息死、狂い死にだ。

まさに、『五根ジャー』である。

しかし、まだまだ、ザ・コーンには、まだ、恐ろしい部隊が存在する。

『五根ジャー』が遊撃部隊とするならば、こいつらは、究極の戦闘コーン部隊だ。

そう、コーンの中のコーン。選りすぐりの精鋭部隊。

その名は、ひまわり部隊。

“笑うひまわりのステッカー”が部隊認証マーク。

有刺鉄線がグルリと巻かれたコーンに「殺ス!」のタトゥがキラリと輝く。

いくつもの修羅場を潜り抜けたコーンだけが、この部隊に属していると言われている。

五根ジャーのような攻撃に遊び要素は無い。

彼らは、正攻法な攻撃を仕掛けてくる。

野垂れ死にした、格闘家にコーンが憑依したのだろうか?

戦闘センスはピカイチだ。

ハイル・ウニクロよりも、スピードもパワーも桁違いだ。

そんな部隊に、赤神は勝てるのだろうか?

今夜、此所に集いしコーン、それら全てを、リモートコントロールする怪僧 森魚。

もうすでに、勝利を確信したのだろうか、笑みがこぼれている!!

『ヤレる・・・ヤレるぞ!!』

ターゲットは、赤神丞と、魂瓶を持つ空缶娘。
狙いは2つだが関係ない。これだけの数なら、勝負は簡単だろう。

『アカガミイイイッ!!死ねいいいいッ!ザ・コーーーーーーン!!』

森魚の奇声が木霊する!

今ひとつ調子が出ないハイル・ビニール ウニクロを戦線離脱させ、
メインコントロールを、ザ・コーンに切り替えての勝負。

股間をレッドコーンで覆い隠している一般兵が、赤神、空缶娘に襲いかかる!!

ちなみに、森魚は、赤神を意識しすぎているため、空缶娘には、オートモードのコーンが襲いかかっている。

『コオオオオオオオオオオオオンッ!!』

ザン!!

華麗に宙を舞いながら、近づく敵を、切り倒す赤神と空缶娘。

白銀の刃、霧雨の鋭い刃が、赤いコーンらを真っ二つに割っていく・・・

血の付いた刃、錆色の大鎌が、スキンヘッドの首を斬り落としていく・・・

しょっぱなから、惨敗だが、森魚は気にしない。

休む暇もなく襲いかかるレッドコーン。
人海戦術だ。数で勝負だ。卑怯と言えば卑怯なのだが、それも致し方ない。

コーンひとりでは、到底、赤神や、空缶娘には勝てないのであるから。

波状攻撃!赤い波が容赦なく襲いかかる!

しかし、両者とも無駄な動き無く、それらを迎え撃つ。

敵を踏み台に、敵の攻撃を交わし、そして斬る。

その繰り返しだ。

だが、少しでも油断すれば、コーンの波に飲み込まれてしまう。

一瞬の隙も逃さないとばかりに、攻め入るコーン。

シュッ!!

レッドコーンの右のフックをダッキングで交わしながら、
抜き胴を食らわす赤神。

バサッ!

死人の身体が真っ二つに割れる。

いつターゲットになるかもしれない痢煙。

痢煙から敵を引き離すには、この状態を維持しなければならない。
敵をひきつけ、そして敵を粉砕する。

目視で、空缶娘の闘いぶりも確認出来る。

上空から見ればフェスティバルゲートの両端で、ザ・コーンとの闘いが繰り広げられている事になる。

「よし・・・散ったな。」

赤神は、宙に舞い、下空を見下ろしながら、戦況を把握する。

ゴンドラ、糸の奪いの乱闘を中心にし、コーン部隊は、二つに分割された。

痢煙は、ゴンドラの真下、乱闘の中に紛れて移動しているので、
見つけるのは容易ではない。

後は、痢煙が、浮遊する酒野肴の魂を捕獲するだけだ。
その瞬間も近い。

赤神は、息を乱す事なく、迫るコーンを斬り続けた。



つづく・・・