鈎針婆の章 おろし!! #58†紙コップ†

--------------------------

ヒソヒソ・・

ヒソヒソ・・


「桜マンションの奥さん・・不倫してるんだって・・ガガガ・・・」


ヒソヒソ・・

ヒソヒソ・・


「ええ〜901号の奥さん、不倫してるの?新婚でしょ?ガガガ・・・」


ヒソヒソ・・

ヒソヒソ・・


「ね〜ね〜いつ奥さんと別れるの?ガガガ・・・」


ヒソヒソ・・

ヒソヒソ・・


「ドン・・・コニシ・・キ・・ガガガ・・・」


ヒソヒソ・・

ヒソヒソ・・


『ぐう・・・・マズイ。・こんな噂話・・ゼンゼン美味くないわっ』


プツーン。


そう言いながら、糸電話を回収する鉤針婆。

鉤針婆は、あの"餃子耳の女"を、諦めきれずにいた。

『御伽婆・・あのまま、ワシがやられたと思ったようじゃ。
しかーし、それは死んだふり。
まんまと騙されおったわい。まあ、化け物だし、死んだふりと言うのは、
おかしいがな。けけけ。』

鉤針婆は、御伽ラリアートをモロに喰らったが、ピンピンしている。
なぜなら、ラリアートを喰らったと同時に、糸電話を、近くの電線にひっかけ、
電線のしなりを利用し、衝撃を吸収したからだ。

そして、大げさに"イナズマ受け身"をして、地面を大げさに破壊し、
あたかも、地面に激突したかのように見せたのだった。

『絶対に今夜、あの"餃子耳の女"を喰らってやる!!』

鉤針婆は、持てる糸電話10本、全てを放ち、置き釣り体制で、
獲物がかかるのを待つ。

フェスティバルゲートの塔の上で。

『今夜は、たしか"ゴンドラ祭り"だったな・・じゃが、ワシには関係ないわい。
今は、あの耳じゃ!・・・しかし、耳焼きそば・・食いたいしな。』

そう、鉤針婆、屋台の耳焼きそばが急に食べたくなり、電波塔での釣りをやめ、
このフェスティバルゲート内で一番高い塔で、釣りを行う事にしたのだ。

『う、やべえ。御伽婆だ。』

鉤針婆は、今見つかると面倒な事になると思い、
塔の上から落ちないように這いつくばった。

ものスゴイ速さで、"ダンボールキャタピラ"が走って来た。
そして、フェスティバルゲートの入口に横付けした。

『ふう・・祭りじゃ。今夜は祭りじゃ、』
と、御伽婆が、"ダンボールキャタピラ"から出てくる。

まるで、高級車から降りるかのように優雅で・・
しかしダンボールキャタピラだが・・・

『おババ・・そちらは、フェスティバルゲートの入口です。
"世界の温泉"は、こちらの建物ですよ。』
と、溝から、頭を出す鳩胸のポルポ。眼帯をしている。
実際に、フェスティバルゲートの敷地内に『世界の温泉』という
スパ施設があります。
『ヨーロッパゾーン』 や『アジアゾーン』などがあり、
世界の有名な建物に見立てたお風呂が集まってるので、その名前なんですね。

『おお、そうじゃ、そうじゃ。祭りは、始まったばかり。焦ることはない。
それよりも、まずは、残り湯もらいじゃ。』

そう言いながら、御伽婆と鳩胸のポルポは、"世界の温泉"の方に行き、
ドブ板の隙間から、中へと入っていった。

『ふう・・気づきはせんかったな。御伽婆め。
残り湯もらいなど、みみっちい事を、まだやってるのか。』

鉤針婆は、御伽婆がいなくなったのを確認し、もう一度、
紙コップを塔の屋根に並べた。

『さてと・・餃子耳の女、あいつのエサは何がいいかいのう。
どんなジャンルの噂が好きなのか・・うーむ・・わからん。
仕方ない、ランダムの撒き餌で、寄せるかのう。』

そう言いながら、10セットの糸電話のうち、
5セットを"餃子耳の女"用、5セットをエサ収集用にすることにした。


魚(人間)が耳に当てる方をAコップ、鉤針婆が耳にあてる方をBコップとする。
"餃子耳の女"用の紙コップBの口と、エサ収集用の紙コップBの口を合わせ、
エサ収集用の紙コップAが、自動噂収集で受信した噂話を、
"餃子耳の女"用の紙コップAに流す仕掛けである。
"餃子耳の女"用の紙コップAは、打ち込まれたポイントに固定し、
噂を周囲にタレ流し、魚(人間)をおびき寄せる。


『絶対に、釣る!御伽婆に先を越されてたまるか!』

鉤針婆の目は、月の光を浴びて、ギラギラに輝いていた。

そして、塔から飛び降り、耳焼きそばの屋台を探した。
まずは、腹ごしらえということか・・・

「さんちゃん、この砒素砒素どぶおちろくじって本当に当たるの?」
雨女の霧雨に守られている痢煙は、怖いと言いながらも、ちゃっかり占い屋で、
クジを引いていた。

「当たるっていうか、そうなるっていうか・・うーん、なんて言えばいいか・・」
雨女酸性が、痢煙の手にしているクジを見た。


---砒素砒素どぶおちろくじ---

●大尻

月が欠けし刻、ゴンドラが天より降りる最中、
宴は、最高潮となり、地獄より死者の魂が舞い戻る。

・あなたの今夜の天気・・・雨
・待ち人・・・全員集合
・餌食になる確率・・・今夜は、獲物ではありません。
・病気・・・今夜も治りません。
・失い者・・・他者の頑張り次第。
・注意・・・耳。破損。

---以上。

「うんと、大尻(だいけつ)いいじゃん最高よ。今夜は、雨・・当たってるわね。
え、なになに、待ち人・・全員集合・・へえ、いっぱい来るって事かしら・・
今夜は、獲物ではありません・・へえ、そうなんだ。病気、何かしてるのですか?
注意は、耳と破損ですって。」

雨女酸性は、楽しそうに読んでいる。
痢煙は、それを聞きながら、酒を飲んでいる。

『砒素砒素かよ・・しばらくやってないなあ。』
鉤針婆は、雨女酸性と痢煙を横目で見て、耳焼きそばを頬張りながら、
塔の上に飛んでいった。

その時、塔の上に置いてある"置き紙コップ"に、微かな反応があった。


チ・リ・リン・・


『ふーーーーーーーーーーーーーーっくっ!!』


耳やきそばを撒き散らし、アタリがあった紙コップを、力いっぱい引っ張った!


つづく・・・