鈎針婆の章 おろし!! #51†三味線の音†

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リセットボタン、カチャ。

起動・・9・8・7・6・5・4・3・2・1・0

ピコピコピーン♪(起動音)

ハイル・ビニール(タイトル)

ピコピコ ピッピ。
ピコ ピッピ。(ゲーム音楽)

『よーし、攻めるぞ!今度は、ハイル・ビニール大部隊で!うひょっ』

森魚は、興奮して、コントローラを持つ手が震え出す。

『まずは、コマンド「ゴミ袋サーチ」を選択。ターゲット付近に捨てられているゴミ袋はと・・・』

側で、森魚を見たらかなり危ないと思う。

頭にゲームカセットが挿さってることを無視して考えてみても、
十分に怪しい。
ゲームコントローラをもって、独り言をいう坊主さんに、ぜったいに説教は聞きたくない。

森魚には、ゲーム、タイトル画面は見えていて、音楽も聞こえてるのだが、
他人からしてみれば、頭が逝ってしまわれた人にしか思われないだろう。
ましてや、戦ってる人には、見えないだろう。

『おお!ハイル・ローチンに、ハイル・カマタデンキ(ラビ)、ハイル・無痔琉血も!!』
それぞれ、ローソ○、ヤマダデ○キ、無印○品、が元ネタですね(笑)
その袋の強度や薄さなどによって、ハイル・ビニールの強さも
変わってくるんだそうです。
ハイル・ウニクロが強かったのも、ユニ○ロの袋が強いから。


この、作戦モードのコマンドは意外に楽しいらしい。
嬉しそうに白目で、確定ボタンを選択する森魚。

チャラン♪

『うひゃ、イケル!イケル!兄が悪いんだよ!!我々を裏切るからな。
くは〜裏切りには血を命を。赤神の血は、この世から消し去ってやる!
この森魚がな!!』

公園のベンチに座りながら、絶好調に、ボタンを押す森魚。

ピコピコピコ ピコリーン♪

『よーし!準備完了。確定ボタン押すぞ!いくぞ!』

ピコ。

『死ねー赤神ッ!!』



ガチャ!!



ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『うぎゃあああああああああああああああああッ なんだああ?あ、頭が痛い!痛すぎる!!』

ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『目の前がああああっ』


ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『どっピンク!!』



頭を抱えて苦しむ森魚。




『あれ?な、無い・・・無い??カセットがあああああっ』


吠える森魚。事態を把握出来ていない。


「死ねとは、何ですか、アンタ。」

突然、声がした。


森魚の後ろから・・・

『!?』

びくっと驚いて、飛び跳ねる森魚。

すかさず、リセットボタンを押す。

視界が通常モードに切り替わる。


「まあ、そんな飛び跳ねなくても。」


森魚の目の前に女がいる。

日本髪の女。

着物を着た女。

三味線を抱えている。

右手には、森魚の頭に挿入してあったゲームカセットを持っていた。

無理矢理引き抜かれたカセット。
ゲーム中に吹き抜かれたカセット。
リセットボタンも押さず、まして、排出用装置も使わずに・・・
この女は、森魚の頭から引っこ抜いた。

『あわわ・・き、きさま・・何をする・・』

森魚は、こうも簡単に、後ろを取られた事が今までに無かった。

『いつから、そこにいた・・・』

変な汗が、森魚の額に流れた。


「死ねー赤神ッ!!」


と、いきなり大声で女が叫んだ。

ビクッ

めちゃくちゃ驚く森魚。


「フーン、アンタ、こんなもんで動かしてるのん。変態ね。」

ポイっとゲームカセットを意外にあっさりと返す女。

『いったい・・誰なんだ・・』

「アンタが、殺すって言ってた"本人"です。」


『??』

「何すっとぼけてんだよ!この変態坊主が!喧嘩売ってんのお前だろ!!」

と怒鳴りながら、三味線のバチを、森魚の眉間に突きつけた。

またしてもビビる森魚。

『も、も、もしや・・赤神・・ひ・・いろ』

「よろしい。」

バチを懐に納め、ニコリと笑う。

赤神 緋威露(ひいろ)

丞とダンナアの母。

三味線のお師匠さんというのが表の顔。
裏では、世界中を渡って化け物退治をしているという。

彼女に、年齢を尋ねると、記憶喪失になると云われているので、
年齢は不詳。

日本の円、つまりお金が大好き。
三度の飯より、お金が大好きなのだ。

彼女に、化け物退治の依頼をするときは、ビッグマネーが動くと云われている。


『やるのか!?・・・』

緋威露の気迫にかなり押されている森魚。

声が震えている・・・

それでも、返してもらったゲームカセットに息を吹きかけ埃を取り、
頭に差し込んだ。

ガチャ・・リ・・

「やりません。」

涼しい顔で、答える緋威露。

いったい何を考えているのだろう。

一度取り上げた武器をまた敵に返すなんて・・・

森魚にとってはとてもラッキーだった。
この辺りには、万が一のために仕込みがある。


『ふふふ、甘いな。良く見ろ、周りを。くはははははははッ』

森魚に自信が沸いてくる。調子のいい森魚。

ゲームカセットが装着出来れば、いくら緋威露といえども・・倒せると思った。

「うーん、汚い。ゴミばかりですね。スーパーの袋がいっぱい。それが何か?」

別に、どうしたの?と云わんばかりの顔をしている。
全然、動じない。

『わからんか!!こういう意味じゃ!ハイル・ビニール!!緊急モード オーンっ!!』

森魚が叫ぶ!セレクト、スタート、Aボタンを押す!

モコリコした煙が人型になる!!

そしてビニールを被った合成人間へと変化する!!

丞を苦しめた森魚動かすハイル・ビニール!!

ボフッ!

ボワッ!!

ジュジュ!!

ボフッ!

『!?』

森魚の動きが止まる。

『ど、どうした!?』

次々と、生まれてくるハイル・ビニールが、どんどん爆発し消えていく!!

ボフッ!

ボワッ!!

ジュジュ!!

ボフッ!

『カセットが壊れたのか!?』

森魚は、取り乱す。


『なぜーーーーーーーッ!!生まれてすぐ死ぬ!!』

「壊れてないでしょ?それ。・・意外に、アンタ能力ないのね。」

と、いいながら、緋威露は、いつの間にかちゃっかりベンチに座り、
キセルを吹かしていた。

「ふう、美味しい。」

おおいに寛ぎ中だ。

『な、なにを・・した』

森魚は、もはや動けないでいた。
いったい何がハイル・ビニールの身に起こっているかさっぱり分からないでいた。

「尋ねる前に、よく見なさい。」

何食わぬ顔で、美味しそうにキセルをふかし続ける緋威露。

『こ、こ、これは・・結界・か・・・』

もともと血の気はないが、真っ青になる森魚。

もはや、脳内は"終末"を感じている。

「フウ、おわかり?だから無駄なのよ。」

緋威露は、森魚を軽く睨み、キセルをベンチの角でポンと叩き、灰を落とした。

すでに、辺り一面に、結界が張り巡らされていた。

森魚が、ダンナアに夢中になっていた時に・・・

音の結界。

緋威露が作り出す結界。

音が空間を走り、蜘蛛の巣のように張り巡らされた結界。

緋威露が、三味線を弾けば、光の線が空間に生まれる。
その光の線は、奏でた場所を軸に、四方八方、無数に張り巡らせることが出来る。

触れると、化け物は只では済まない。

通常の人間、魔力が弱い化け物は、この光の線を見る事は出来ない。
魔力が強い化け物、御伽婆、鉤針婆レベルだと、意識すれば見る事は出来る。

森魚も、見ることが出来る。

『こ、これが・・「長唄三段殺し」・・なのか・・』

森魚が、恐怖におののいている。

真っ青を通り越して、真緑の顔になっている・・

脳内の"終末"は、もうそこまで来ている。

ジリジリと後退する。

「あっ!」

緋威露が立った。

『ひっ』

びびる森魚。
もう、緋威露にビクビクである。

「アンタ、それ以上さがると、アンタ用に奏でた音があるから。ふふふ・・焼けるよ。」

そう言いながら、またバチを森魚に向けた。

「あ、そうそう、丞はともかく・・」

バチがグイグイと森魚の額にめり込む。

目を閉じてこの恐怖に耐える森魚。

『ゴクリ・・・』

生唾を飲み込む森魚。

その顔を見た

「ダンナアに手を出すなよ。」

そう言いながら、クルリと踵を返し、公園からさっさと去って行った。

そして、小さな声で、
「あの子、調子にのるから・・」と、付け加えた。

いったい何しに来たのだろう。

煙草を吸いに来ただけなのか?

「ああ、忙しい。忙しい。今夜は大変」
と言いながら、闇に消えて行くのであった。


森魚は、しばし動けずにいた・・・三味線の音が消えるまで・・・


つづく・・・