鈎針婆の章 おろし!! #50†望む心人知れず†

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ビニール袋が、風に舞う。

それは合成人間ハイル・ビニール。

『ほう・・鶏が入っていく・あそこかあ・・あんなビルの谷間にあるとはな、赤神のアジトが。
結界が張られていて、今まで見つけられなかったが・・・』

終末坊主 森魚が、ニヤリと笑い、結界の隙間にビニール袋を滑り込ませた。

『うひゃっ!見えるぞ!見えるっ!!思ったより結界の中は随分広いぞ。』

森魚は、ハイル・ビニールを遠隔操作している。

つまり、森魚とハイル・ビニールは、リンクしているのだ。

『林があり・・小屋・・そして・風情な庵・・・あそこか・・・』

ハイル・ビニールの眼に映る物は、すべて森魚は見えている。

たとえ、複数のハイル・ビニールを操作したとしても、スウィッチング機能があり、
ハイル・ビニールの目から目へと視覚を切り替える事が可能である。
また、画面分割も出来るので、あらゆる視覚情報をいっぺんに得ることが出来る。

森魚の、頭の回路は、人智を超えている。

もうすでに、頭にカートリッジカセットが挿入出来る時点で、人間を超えている。

そう、森魚は、ゲームカセットを、頭にガチャリと挿入できるのだ。
そのゲームカセット(森魚専用)に、合成人間を動かすプログラムが入っている。
ひとつひとつプログラムが違うので、合成人間によってカセットの交換が必要となる。
ので、現在使用中のカセットには、「ハイル・ビニール」とプリントされている。
他にも、カセットは、いろいろあるようだ。

『ようし・・小屋の裏に、着陸だ・・十字キーをそおっと・・よーしよーし。』

合成人間の主な操作は、森魚が持つゲームコントローラで行われる。
コントローラは、森魚の脳に接続されており、
十字キー、Aボタン、Bボタンなどを押すことにより、
カセットのプログラムを介し、強い脳波を放出させ、
リンクしているハイルビニールを動かすことが出来る。

この専用コントローラは有線タイプで、
コードの先は、首の後ろ、付け根にある差し込み口に繋がっている。
有線パッドなので、干渉がなく誤作動も起こりにくいタイプだ。

この辺りの技術は、家庭用ゲーム「霊婦捨手餌刺怨 痛」にも応用されている。

通常、ゲーム機本体など、自分の身体を改造してまで導入はしないが、
森魚は、もの凄くゲームが好きらしく、修行の成果、自らの頭部をゲーム機化させたのだ。
なお、すべて、有機物で出来ているので、機械人間ではない。

髪をツルツルに剃った頭部には、カセット挿入口が1つ、
カセット排出用のスライド式手動排出装置、
コントローラの差し込み口が2口など、旧ゲーム機本体のような作りになっている。

コントローラーは、十字キー、AボタンとBボタン、
スタートボタン、セレクトボタン、マイクとシンプルになっている。

ゲーム機本体自体(頭部)培養皮膚でカバーして目立たないようにはしているが、
やはり、色付きカセットを挿入すると、突出して、とても目立つ。
また、コントローラの黒い線が首の付け根から出てたり、
山伏の三角、またはモヒカンのように見える排出装置のスライド穴と取手は、
もはや怪しいどころではない。

こんな、僧侶は、何処にもいないだろう。
僧侶のいでたちで、ゲームカセットを後頭部に挿し、
身体とゲームコントローラが繋がっている坊主なんてものは・・

そんな、坊主が、ハイル・ビニール2体を操作している。

ハイル・オモナガ(書店) 怪しい物を購入すると入れられる伝説の黒いビニール袋。

主に偵察任務を行うビニールである。
ハイル・オモナガ、元ネタは「ノブナガ書店」(笑)

『鶏が、扉を開けたな・・我に気づきもしないわ・・よほど、弱っている。
それとも、我を巻いたとでも思ってるのかのう・・・
これならもっと近くに行けるな。』

森魚は、赤神との戦いの後、傷ついた鋼丸をわざと逃がし、後を付け、
この庵に潜入するのに成功した。


ガラッ・ラ・・門が開く。

「ダンナア・・様・・・ぐあ・・」

鋼丸は、懐刀「紅葉揚羽」を、大切に抱いたまま、力尽きて門の前に倒れた。


ドサ・・・リ・・・


「・・ん・・ん?・・・何かしら。音が・・・」

目を覚ます 赤神 ダンナア。

本を読んでいるうちに、そのまま眠ってしまっていたようだ。

「お兄様が、お忙しい時に、寝てしまう私ってどうなのかしらね。」

そう独り言をもらしながら、髪の乱れを直しながら、寝室を出る。

ボウ・・ジジジ・・自然とランプに灯がともる。

「さて、音はどちらからしたのかしら?」

ダンナアは、縁側から庭を見た。

雨戸は閉めていないので、よく月が見える。

ダンナアが、目を細め、庭を見ると、
庭の草木に、ホタルのように明滅する淡い灯りがともり出した。

「ああ!もしかして、お兄様の部屋に置いてある、赤悪人形かも!!」

ダンナアは、丞の部屋へ走る。

ダッダッダッダ。

ガララ・・・コト・・。

「違うみたいね・・寝てるわこの人形・・じゃあ、どこから?」

作りかけの人形、赤悪人形をもとの場所に戻す。

『ダンナア様・・・』

「ん?・」

『ダンナア様・・丞様は、ハイル・ビニールといわれる集団に襲われ、
手傷を負われました・・うう・・』

「え!?テレパシー!・・鋼丸、どこですか?どこから・・」

『この屋敷の入口です・・それよりも、私にかかったマジナイがとける前に、
お伝えしたい事が・・』

「門ですね、今行きますから。そのまま話は続けなさい。」

『・・ハイル・ビニールに襲われ、不覚にも鋼丸、黒丸共々、
丞様をお守りする事が出来ませんでした・・・
黒丸は、傷を負って意識を失った丞様をマンホールの女の巣にお連れし、
この窮地を逃れましたが・・その後の詳細は、わかりません・・心が通じません・・
わたしめは、ダンナア様の懐刀をお守りし、ここまで・・グフ・・・』

ダンナアは、縁側から庭に出て、門に向かう。

裸足のまま。

開いた門の前に、何かだ倒れている。

「鋼丸!!」

ダンナアが駆け寄った時には、鋼丸にかけられていたマジナイは消え、
軍鶏の姿に戻っていた。

羽は折れ曲がり、ぐったりと地に倒れ伏していた。

「鋼丸・・・」

死んではいない、息はある。
ただ、弱りはて意識はない。

ダンナアは、膝をつき、鋼丸が折れた羽の下にある「紅葉揚羽」を拾い、
そっと鋼丸を抱き上げようとした・・・その時。

何かを感じた。
誰かに見られている感じがする。

「・・・誰か・・いるのですか?」

闇を見つめるダンナア。

小屋の陰、真っ暗な陰に何かを感じる。

その闇の中には、2体のハイル・ビニールが忍んでいた。

(ふふふ・・いけるか、偵察のつもりだったが、赤神の妹の方から、外に出てきやがった。)

森魚は、出るか出ないかの迷いが生じた。

目を細めるダンナア・・・

「もしや?・・ああ・・・」

ダンナアはおびえた顔をしている。

銀色の髪が、風に揺れる。
月明かりの下、いっそう白く見える顔に、陰が落ちた。

(ふはは、着物姿・・しかも寝間着だ・・裸足・・この女、怯えてやがる・・イケル!!)

森魚は、十字キーを押した。

ゆっくりと、ハイル・ビニールが姿を現す。

ハイル・オモナガ 2体。

全裸に黒いビニール袋をかぶった男。
肌は黒色、細めの身体。140センチの小さい男。

「きゃあああああああああ!!!」

ダンナアは悲鳴を上げた。
後ろに倒れそうになるダンナア。

(イケル!!)

森魚は、Aボタンを叩いた!!

ハイル・オモナガが一斉に攻撃をする!

シュバババ!!

ビリリリ!!

「きゃあっ!」

ダンナアの着物の袖が破れた。
白く細い美しい腕が露わになった。

(うひゃ!!)

興奮する森魚。

十字キー、Aボタンなど押しまくる!!

シュバババババっ

ビリリッ!!

「いや・・っ」

きわどく着物がはだけ、美しい脚が月夜に照らされる。

(うひょ!!イイ!!見える!!これなら押し切れる!!)

森魚が、力攻めに入った。

その時、ダンナアの目がキラリと光る!

「きゃあー来ないで!!いやいやいやいやーっ!!」

泣き叫びながら、がむしゃらに紅葉揚羽を振り回した。

ズバババッ

スブッ!

ジュバッ!!

(ギャーッ!!痛!!くっ・・いつのまに刀を!やはり、偵察用ハイルでは弱い!
ここは引くか!!うあうあうあーッ)

森魚は、悔しそうに2体のハイルを引き上げさせる。

ハイル・ビニールは、戦闘モードから飛行モードに変わり空に飛んでいった。

「フウ・・・行った・カナ??」

ダンナアは息を吐いた。

ゆっくりと立ち上がるが動けないでいる。

怖かったのか?

自分を抱きしめるようにして、下を向いているダンナアの身体が震え出す。

泣いている?

恐怖が今頃になって、身体に表れたのだろうか・・・・

よくあることだ。

「あは・・あははは・・あははははは!!あははははッ!」

ダンナアは、堪えきれずに大声で笑った。

なんと、震えていたのは、笑いを堪えるためだった。

「あは、これだけ、怯えておいたら、森魚のことだから、次は大部隊で攻めてくるでしょうね・・・キャハッ!!」

乱れた着物姿で、何度も飛び跳ねるダンナア。

ますます乱れる着物。

「ああ、どうしましょう。ワクワクする。ウズウズしちゃうよ〜いや〜ん★」

もう、普段のダンナアじゃない。

壊れたのか?

誰も知らないダンナアが此所にいる。

まるで子供だ。

いや、あの人のようだ。

酒でも飲んでいるのか?

いや、飲んでいない。

素で、怪異、戦闘を楽しんでいる。

「いっぱい来たら、みんな纏めて殺しちゃう♪」

手を組んで、瞳をキラキラさせて妄想の世界に入っているダンナア。

兄も知らない妹の姿。
クールな兄が、この事を知ったら、かなりショックだ・・・

ダンナアの本当の姿とは・・いったい??

「あっ、着替えなくちゃ。急がないと!!来てしまわれますわ。」

駆け足で、家に向かうダンナア。

もの凄く笑顔だ。

「ああああ!!」

突然、立ち止まり、振り返る。

「いけなーい。鋼丸の治療もしなくちゃ。」

そう言いながら、急いで門まで戻り、
鋼丸を抱いて、猛スピードで家の中に入って行くのであった。

ものすごく、はだけた着物姿で・・・・


つづく・・・